教育の方針として3つの核を据え、よりフェアで主体的な人間への成長を支援します。
1 コミュニケーション能力【相手を理解し、的確に自分を伝える力】
子どもがお友達をぶった時、アドラーこども学校では「なんでぶったの!」ではなく「お友達にどうして欲しかったの?」と尋ねます。そのうえで「もっといい方法はなかったかしらね」と子どもと一緒に考えます。まずい行動をやめさせるのではなく、自分の要求を把握しそれを伝える力を身につけるチャンスとして活かすことで、コミュニケーション能力を高めていきます。 また、物語や課題を使って、主人公の心情や他者の立場に立って考えてみるレッスンを行います。相手の心情への想像力を高めることは、いじめ防止のための大切なポイントだと考えます。
(1)自分自身の要求を的確につかみ、相手を傷つけない伝え方ができること
(2)相手の心情や立場にたって考えることができること
この二つがコミュニケーション能力をのばす基本だと考えます。
2 問題解決能力【自分の課題を自分で解決する力】
「おりこうな子」と「かしこい子」との違いは何でしょうか。私たちは大人の言うことをよく聞く、聞き分けのよい"おりこうさん"な子どもではなく、能動的で好奇心が強く積極的な(大人にとっては時に少々手の焼ける)かしこい子に育って欲しいと願います。
積極性は、"私はきっとできる"という自信と、"失敗しても叱られない"という安心感によって育っていきます。私たちは子どもの成功体験はもとより、失敗体験や困った体験こそ成長の機会として捉えています。そして子どもたちの"自分でできた!"を達成するために、子どもたちの失敗や困った体験を温かくそして控え目にサポートします。
「自分でできた!」は自己効力感を高め→自己効力感は積極性を高め→積極的に環境に働きかけることが多くなると→さらに成功体験、問題解決体験が増します→するとさらに自己効力感が高まります。この良循環を生み出すことで、子どもたちの自信と勇気を育てます。
こうした自信と勇気は、子どもたちのこの先の人生で、困難を乗り越える力を与えてくれることでしょう。
3 共同体感覚【信頼し合い、協力し合える力】
私たちはみな"誰かに認めてもらいたい"という思いを持っています。しかしそのための方法が、他者を蹴落としたり、嘘をついたりというやり方では困ります。他者とつながり、他者と協力し、助け合うといった中で、自分を認めてもらう。そんな方法を選択できる子に育って欲しいと願います。アドラーはこの考え方を「共同体感覚」と呼び、心の健全さはこれによって決まるというほど大切にしていました。
アドラーこども学校では一人ひとりの能力や個性をきめ細やかに見つめ、日々言葉をかけて勇気づけていきます。そうした中で、子どもたちに"自分は自分の能力を発揮することで仲間にとって有益なことができるんだ"という自信と貢献の喜び(=共同体感覚)を培ってもらいたいのです。温かい社会との関わりを実感し、社会との関わり方を学ぶ事で、やがて社会に出て行くための準備をします。
つながりを感じられる仲間がいることは、心にとって大きな支えとなります。もしクラスでいじめられることがあっても、アドラーこども学校の仲間たちで支えあったり、クラスからの逃げ場になれたなら、最悪の事態を防ぐことができると考えます。